ふとしたきっかけで出会った「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」という本を読みました。
著者の元アイドルはSDN48に所属してたという大木亜希子さんです。
アイドル卒業後はフリーライターとして活躍されています。
そんな元アイドルが赤の他人のおっさんと一体どんな生活を送っているのか気になり、購入してみました。
しかし本の中身は、おっさんとの暮らしについてよりも、恋愛や結婚で悩む結婚適齢期の女性の悩みが大半を占めています。
若干期待外れなところはあったものの、独身である私には大木さんの悩みに共感できるところも多く、恋愛や結婚観で悩む結婚適齢期の女性に読んで欲しい内容だと思いました。
というわけで、「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」の感想を述べていきます。
おっさんササポンとの暮らしが気になって買ったけどあまり触れられていない
本書が気になったのは、おっさん・ササポンとのシェアハウスの内容が気になったからです。
ササポンと暮らしたきっかけも、お金がなくなったからということだったので、お金のない暮らしぶりも見れるかなと期待してました。
が、読んでみたらササポンとのエピソードは薄く、どちらかといえば大木さんの恋愛や友情・仕事の話がメインです。
「結婚適齢期で彼氏が欲しいけど、好きになった男とはうまくいかなくて人生に悩んでいる、どうしよう?」
といった話がひたすら続きます。
ササポンは悩む大木さんにちょっと話しかけに登場するくらいで、ササポン目当てで購入した私には物足りなさがありました。
しかも、大木さんの暮らしはお金のない様子が全くなく、カフェには行くしウーバーイーツしてるし、手取り14万円・節約家の私からすると贅沢な暮らしぶりでした。
貧乏になった元アイドルがおっさんとシェアハウスしてお金の見栄から解放される話かと思ってたら違いました。
お金ではなく、恋愛に関する見栄から解放されてく話でした。
マウントを取られることに恐怖する女性に読んでほしい内容
本書を読んでいると大木さんの女としてのプライドの高さがすごく伝わってきます。
女友達が結婚したときの心境、結婚した姉への感情、マウントを取ってくる年上既婚女性への怒りなど、私自身にも覚えがあり、女として見下されることへの恐怖心も強く感じるのです。
だけど、この本の内容は明らかにマウント女子に見下される隙を与えるようなもので、私自身さえも読んでいて「大木さんより私のほうがマシかも…」と思わされました。
それほど大木さんが振り切って、自分の人生とその時の感情を明け透けに書いているのです。
元アイドルとしての肩書きもあってプライドも高いだろうに、ここまで曝け出せるのは凄いと感心します。
あとがきには「生き方に悩む人すべての方々にとって、少しでも力になれればいいな」と書かれていました。
大木さんの明け透けに書かれたエッセイには、同じようにマウントで苦しむ女性を救いたいという想いがあるんだと感じられました。
人は群れて生きる動物なので、一般的な人生設計を送れている人は優れていると本能で判断されます。
だから結婚適齢期でも独身である者は、群れから外れた劣等生とされ、マウントを取られれば確実に負けなのです。
私は安月給で彼氏もいなくて結婚もしてない32歳の女で、既婚女性に出くわせば格好の餌となりマウントされます。
マウントされて傷つくのもバカバカしいけれど、「自分はこのままでいいのだろうか」と思い、自分の人生を悲観してしまいます。
パートナーを作れず子孫を残していない私は、生まれてきた価値がないのかと思ってしまうのです。
そんなことを考えて生きるのはつらいので、必然的にマウントを取ってくる既婚女性とは疎遠になります。
友達が結婚してショック受けるのも「ああ、この人も自分の人生を否定してくるようになるのかな」という恐怖心が少なからずあったりします。
友達を信じていないわけじゃないけど、自己防衛本能から汚い感情がついつい出てきてしまうんですよね。
大木さんの本を読んでると、マウントを取られて嫌な感情が出ることは仕方ないことなんだなと思えます。
そして私自身、自分を肯定するために恋愛や結婚以外のところでマウントを取っているんだとも気付かされました。
誰と比べるでもなく、ただ自分の人生を肯定して生きるって難しいなあと考えさせられます。
本書はマウントを取られ続けて、自分の人生はもちろん、他人の人生をも肯定的に見れなくなった時に読むと救われるんじゃないかと思います。
マウントに怯える女子は一度読んでみるといいかもしれません。
大木さんのマウントを取ってくる人への醜い感情から理想の感情になるまでの捉え方の変化は、心地よいものがあります。
結婚していないことが普通じゃないならもっとおかしく生きちゃえ?
私は一般的な女性の幸せとは程遠いところにいるんだと思います。
結婚適齢期を過ぎた女性は、結婚していないだけで女の幸せが手に入っていないことにされます。
普通じゃないとされて、余計なおせっかいをかけられます。
「いい人いないの?」
「結婚してないと寂しいんじゃない?」
「女の子がずっとひとり暮らし続けていいわけないでしょう」
「人生設計どこで間違えたのかしらね」
「早くいい人見つけて結婚して子供を生みなさいよ」
「可愛いのになんでなのかしらね」
親戚に会う機会が多かった時はこういうことをよく言われていました。
あとはパートのおばちゃんが多いバイト先に勤めた時に、赤の他人の既婚おばさんにも言われました。
こういうことを言ってくる人は、品がなくハシタナイと思いますね。
「結婚しただけで自分の人生完璧だと自惚れてんなよ」と…心の中で吐き捨てながら適当に相槌を打っていました。
そんな私の結婚観ですが、どうしても結婚したいわけでもなく、結婚したくないわけでもなく、すべて人生の流れに身を任せたいんです。
婚活パーティーに行く気はなく、結果独身ならそれでいいし、万が一これから結婚することになったらそれはそれで嬉しいっていう感じで生きたいんですよね。
私の人生に結婚っていうのは必ず必要なわけではなく、絶対不要ってわけでもないんです。
いい人がいなきゃ独身貫いて楽しむし、結婚相手にいい人が現れたら結婚生活頑張りたいと思ってます。
そんな結婚観でしたが、独身というだけでマウントを取られるから、一時期なんでもいいから結婚したいと思うことがありました。
だけど、それはやっぱり違うし、自分にも相手にも失礼な人生になってしまいます。
自分が結婚については流れに身を任せたいと思っているのだから、その気持ちを大切にしなきゃ、それこそ人生が狂ってしまいます。
結婚についてあれこれ言われたキッカケから、他人の意見にとらわれず、常識や見栄といったものから離れ、自分の人生をしっかり考えることができました。
今、手取14万円生活を楽しめるのも、痛いと言われるアイドルオタクを思い切り楽しめたのも、世界を飛び回って旅を謳歌したのも、常識や見栄にとらわれなくなったからだろうと思います。
結婚してない時点で普通じゃないと思われるなら、いっそ可笑しな人生にしてやろう!と振り切れました。
結局は自分の人生を肯定的に生きるしか幸せにはなれなくて、それはきっと結婚しててもそうなはずです。
大木さんも最後は自分の人生を生きると決めていました。
そこまでのどうしようもない葛藤から前を向いていました。
おっさんと暮らすという奇妙な生活を肯定したことで、自分の人生も肯定できたんだろうなぁと感じました。
私が大木さんのような悩みを抱いていたのは過去の話です。
だから最後の章にだけ共感できて、それまでの話は近親憎悪というか、過去の嫌な自分を見ているようで少し恥ずかしくも感じました。
過去の私を気付けたおかげで、「私は今いい方向に向かっている」と再確認できました。
元アイドルなのに感情も生活も赤裸々に書いた大木亜希子さん
この本の魅力はおっさんと暮らす奇妙な生活のことではなく、元アイドルの肩書きを持った大木亜希子さんが、醜い感情もだらしない生活もさらけ出しているところにあると思います。
元アイドルとおっさんとの生活に興味がある人よりも、「あー恋愛がうまくいかない私ってなんてダメな女なんだろう」と、自分を責めてしまう女性に読んで欲しい本でした。
上手くいかない恋愛をして、自分自身も目を背けたくなるような感情が渦巻いて、だから私は選ばれないんだと責めてたら、この本を読んで欲しいです。
大木さんは恋愛中の醜い感情とも向き合って肯定するかのように、本書で曝け出しています。
読者としては、人様に褒められる感情を抱くだけが私じゃない、と励まされるような気持ちになれます。
大木亜紀子さんの著書の魅力はそこにあると思うんですよね。
この本の帯のコメントや紹介文は、ササポンを絶賛するコメントが目立つので、大木亜希子さんはサブの印象でした。
けれど、結婚観に悩む独身女性からしたら、ササポンの言葉より大木さんの感情こそ絶賛したくなるんじゃないかと思いました。
「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」は、おっさんとの奇妙な暮らしぶりを書いている本ではなく、恋愛が上手くいかなくなって周りが疎ましくなった女性が自分の人生を生きようと這い上がる話を書いた本です。
恋愛や結婚観に悩んでいる方は是非読んでみてください。